民間の金融機関でお金を借りるには、安定した収入を求められます。
それも金額も重要で、低所得者の場合はほぼ間違いなくお金を借りることはできません。
では、低所得者はどこからもお金を借りることはできないのでしょうか?
実はきちんと自治体によるセーフティーネットが用意されていて、民間から借りることができない場合でも、市からお金を借りられる仕組みがあります。
ここではそんな市からお金を借りる方法や、そのときのメリット・デメリットについてご紹介します。
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このページでわかること
市からお金を借りる場合には生活福祉資金貸付制度を利用しますが、この制度は国の政策によるものであり、実施するのは都道府県社会福祉協議会で、申し込みや相談窓口になっているのが市区町村社会福祉協議会です。
この制度を利用できるのは非課税世帯である低所得者や、障害者世帯・高齢者世帯だけです。民間の金融機関で融資を受けられる人は利用できません。
融資を受けることで、経済的な自立を促すための制度ですので、収入がない人や将来的な収入も見込めない場合にも利用できません。
このように借りるための条件がとても厳しい制度ですが、連帯保証人がいれば無金利、いなくても年1.5%の超低金利でお金を借りることができます。
ただし、融資を受けるためにはいくつも書類を用意し、何度も面談を行う必要があります。
融資開始までに1ヶ月近くかかることもありますので、いますぐにお金が必要だというケースでは利用できません。
ただし、福祉金庫・小口生活資金貸付を市が行っている場合には、そちらから即日融資を受けられることもあります。
市からお金をかりる場合には生活福祉資金貸付制度を利用する
市からお金を借りる場合には、生活福祉資金貸付制度を利用します。
正確には市から借りるのではなく社会福祉協議会から借りるということになりますが、その説明も含めて生活福祉資金貸付制度について詳しくご紹介していきます。
生活福祉資金貸付制度とは
まずは生活福祉資金貸付制度がどのような制度なのかを説明します。
生活福祉資金貸付制度は、民間の金融機関から融資を受けることができない人が、経済的に自立できるようになるのを目的とした、国の政策による貸付制度です。
この制度を実施しているのが都道府県社会福祉協議会で、相談や受付窓口になっているのが各市区町村社会福祉協議会です。
各市区町村社会福祉協議会は市役所内に設置されているケースもあり、あたかも市からお金を借りているような形になっています。
社会福祉協議会は地域福祉の推進を図る民間団体ですので、国の政策を民間団体が実施しているというやや複雑な体制になっています。
とはいえ、そもそも行政機関の予算で活動している民間団体ですので、名目上は民間であっても、実質的には国の組織になります。
このため、正確には市からお金を借りるわけではなく、国の行政機関からお金を借りているのだということを、頭の片隅に置いておいてください。
生活福祉資金貸付制度はどんな人が利用できる?
生活福祉資金貸付制度は福祉のための貸付制度ですので、誰でも利用できるというわけではありません。
利用できる条件としては下記の2点がポイントになります。
- 民間の金融機関が融資を断る
- 安定した収入がある、もしくは今後見込める
重要なのは民間から借りられないということです。
民間で融資を受けられる人は、そちらから借りてくださいというのが基本的な考え方です。
なおかつ貸付ですのできちんと返済できるということがポイントになります。
この2点を満たし、なおかつ所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯のいずれかの世帯に属する人が生活福祉資金貸付制度を利用できます。
それぞれの世帯について簡単に説明します。
低所得者世帯
市町村民税が非課税となっている世帯
障害者世帯
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯
高齢者世帯
65歳以上の高齢者の属する世帯
生活福祉資金貸付制度の種類
生活福祉資金貸付制度では、使用用途ごとに貸付金を分類しています。
ここではどんな種類の貸付金があるのかご紹介します。
生活支援費
低所得者を支援することで、自立した生活を取り戻させることを目的とした資金です。失業や給与カットなどによって生活が苦しくなったときに利用できます。
貸付限度額:【単身】月15万円以内【2人以上】月20万円以内
住宅入居費
低所得者が就職や生活を安定させるために引っ越しをするとき、その引っ越しにかかる費用を貸し付けるための資金です。
貸付限度額:40万円以内
一時生活再建費
生活支援費は生活にかかる費用を貸付けしますが、こちらは転職や就職のための技能取得費や滞納している公共料金の立替費、債務整理をするための必要経費などを貸し付ける資金です。
貸付限度額:60万円以内
福祉費
低所得者世帯だけでなく障害者世帯や高齢者世帯も利用できる資金で、仕事に必要な経費や福祉用品の購入、冠婚葬祭の費用など幅広い用途に利用できます。
貸付限度額:580万円以内
緊急小口資金
急に入院や手術が必要になったときや火災で被災したときなど、一時的にお金に困った人に対して小額の貸付を行うための資金です。
貸付限度額:10万円以内
教育支援費
低所得者世帯に属する人を対象に、高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校に就学するために必要な費用を貸し付ける資金です。
貸付限度額:【高校】月3.5万円以内
【高専・短大】月6万円以内
【大学】月6.5万円以内
就学支度費
低所得者世帯に属する人を対象に、高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校の入学金として貸し付ける支援資金です。
教育支援費と違い一括で融資されます。
貸付限度額:50万円以内
不動産担保型生活資金
居住用不動産を所持している高齢者世帯がその家に住みながら、不動産を担保に生活資金を貸し付けてもらえる制度です。
借り受けた高齢者が死亡したとき、または融資期間終了時に担保物権を処分して返済します。
貸付限度額:月30万円以内(土地の評価額の70%程度)
要保護世帯向け不動産担保型生活資金
この制度を利用しなければ生活保護の対象になる要保護であると福祉事務所が認めた世帯向けの貸付金で、評価額が500万円以上の居住用不動産を担保にして、生活資金を融資してもらえます。借受人が死亡した場合に貸付契約が終了し、相続人が貸付金と利子を償還します。
貸付限度額:生活扶助額の1.5倍以内(土地の評価額の70%程度、集合住宅は50%)
市からお金を借りるメリットとデメリット
非課税世帯のように低収入な状態であれば、生活福祉資金貸付制度により市からお金を借りることが出来るのを分かってもらえたかと思います。
それでは、民間の金融機関ではなく市からお金を借りるにはどのようなメリットとデメリットでがあるのでしょう?
メリット
- 無金利もしくは超低金利で借りられる
- 返済期間を長く出来る
- 民間ほど督促が厳しくない
生活福祉資金貸付制度でお金をかりる場合、連帯保証人がいる場合には無金利でお金を借りることができ、いない場合でも1.5%と、民間では考えられない低金利でお金を借りられます。
しかも返済期間が10〜20年に設定されているものが多く、焦って返済しなくてもよく、生活の立て直しを最優先にできます。
そして、返済が滞ったときの督促は民間ほど厳しくありません。
もちろん返済しなくていいというわけでも、滞納してもいいというわけでもありませんが、返済できないときにもきちんと相談に乗ってくれるのが民間との大きな違いになります。
デメリット
- 申し込みから融資開始まで時間がかかる
- いくつも書類を用意し、面談を受ける必要がある
- 社会福祉協議会に何度も行かなくてはいけない
デメリットは、とにかく手間も時間もかかるということです。
まるで、本当にお金が必要なのかどうかを試されているかのように書類や面談が続き、社会福祉協議会には何度も足を運ばなくてはいけません。
そのうえ、融資開始までには1ヶ月くらいかかります。
緊急小口資金のように比較的早く借りられる資金もありますが、それでも1週間程度かかりますので、いますぐお金が必要というケースでは利用できません。
市からお金を借りるための流れ
生活福祉資金貸付制度を使って、市からお金を借りるための流れをご紹介します。
SETP1.市区町村社会福祉協議会に相談
STEP2.市区町村社会福祉協議会に借り入れ申込み
STEP3.都道府県社会福祉協議会による審査
STEP4.審査結果の連絡
STEP5.都道府県社会福祉協議会に借用書を提出
STEP6.貸付金交付
この制度を利用するには、市区町村社会福祉協議会に相談することから始めます。
このため、書類や手続方法は、すべて市区町村社会福祉協議会の担当者が教えてくれますので、利用するのに難しい知識などは必要ありません。
ポイントは、あくまでも市の社会福祉協議会は窓口でしかないということです。
実際に融資するのも返済するのも都道府県社会福祉協議会になりますので、その点だけしっかりと頭に入れておきましょう。
市によっては福祉金庫・小口生活資金貸付がある場合も
市からお金を借りる場合、生活福祉資金貸付制度を利用するとお伝えしましたが、実は市区町村によっては、福祉金庫や小口生活資金貸付といった、独自の貸付制度を用意しているケースがあります。
独自制度ですので自治体によって、連帯保証人の有無や返済期間などの貸付条件が異なります。
この制度なら生活福祉資金貸付制度よりも簡単な手続きで、2万〜10万円程度のお金を借りられるという点にあります。
さらに緊急度によっては、その日のうちに借りることもできます。
これらとは別に、金銭ではなく現物による援助を行っている市もあります。
生活資金の貸付が不可であっても、緊急性が高いと判断された場合には、1日〜数日分の食料などを援助してもらえます。
こちらも市ごとの独自制度ですので、まずは市役所や社会福祉協議会に相談してみましょう。
市からお金を借りる場合にもきちんと返済計画を立てよう
銀行や消費者金融は収益をあげることを目的に融資を行っていますので、安定した収入がある人にしかお金を貸すことはしません。
このため、失業していてそこからの生活を立て直そうという人には1円も貸してくれません。
そういう状況で頼りになるのが生活福祉資金貸付制度です。
生活福祉資金貸付制度は正確には国の政策によって都道府県社会福祉協議会が実施している制度ですが、窓口は市区町村社会福祉協議会が行っており、市役所内に窓口が設置されていることもあります。
お金を貸すことで、経済的な自立ができるようになると判断された人しか借りられませんが、連帯保証人がいれば無金利、いなくても年1.5%とかなりの低金利で融資を受けられます。
ただし、借りたお金ですので返済をしなくてはいけません。
借りる前にはきちんとした返済計画を立て、無理なく返済できることを提示できるようにしておきましょう。
無計画ではさすがに市もお金を貸してくれません。
面倒だと思っても、お金が必要な理由と、どうやって返済していくのかを書き出して、自分で完済できると判断してから相談に行くようにしましょう。