ほとんどの人がお金を借りるとなると、銀行や消費者金融などの金融機関が思い浮かぶかもしれません。
ただ、それらの金融機関から融資を受けるには厳しい審査を通過する必要があります。このため、民間の金融機関から借りられない人もいまよね。
そういう人でもきちんと生活していけるように、日本にはいくつかのセーフティーネットとなる制度が用意されています。
ただ、一般的にはあまり知られておらず、知らないまま債務整理をしてしまったという人も珍しくありません。
ここではそんな国のセーフティーネットを利用して、お金を借りる方法をご紹介していきます。
Contents
このページでわかること
国からお金を借りられる制度は「日本政策金融公庫」「生活福祉資金貸付制度」「母子父子寡婦福祉資金貸付金」の3種類があります。
このうち日本政策金融公庫は国の活性化のための制度ですので、生活費の借り入れなどには利用できず、事業資金や教育資金の借り入れのみ可能です。
生活が困難な低所得者世帯が、生活費などを借りる場合には生活福祉資金貸付制度を利用します。
使徒に応じて様々な資金が用意されていますので、自治体の福祉課や市区町村社会福祉協議会に相談してみましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付金は母子家庭や父子家庭、寡婦などのための制度です。
こちらも生活福祉資金貸付制度と同様に使途別に資金が用意されていますので、お金が必要になった場合には、自治体の福祉課に相談してください。
いずれの制度もきちんと返済できることが借り入れの条件で、なおかつ融資を受けるまでに時間がかかることを頭に入れておく必要があります。
お金を貸してくれる国の制度
国からお金を借りることができる制度は下記の3種類あります。
- 日本政策金融公庫
- 生活福祉資金貸付制度
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金
日本政策金融公庫くらいは聞いたことがあるかもしれません。いずれも民間の金融機関を補完する立場にあり、基本的には積極的な融資を行っていません。
さまざまな理由があり、民間の金融機関がお金を貸せないとなったときに、この3つの制度が国民を守ってくれます。
利用するにあたって注意したいのは、いずでも貸付をおこなうのであって、借りたお金は必ず返さなくてはいけません。
この点を勘違いしている人もいるようですが、生活保護のような支給されるお金ではないということをまずは頭に入れておきましょう。
その上で、どうすればお金を借りることができるのか、制度ごとに把握していきましょう。
日本政策金融公庫からお金を借りる方法
日本政策金融公庫は政府が100%出資している金融機関です。
前身は国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫で、昭和20年から始まる国による融資制度のひとつです。
現在でもその事業は国民生活事業・農林水産事業・中小企業事業の3つに分かれており、基本的には国の活性化のための融資を行っています。
このため、企業のための金融機関という印象がありますが、ビジネスに対する融資の他に国の教育ローンとして教育一般貸付を行っています。
教育一般貸付とは
- 最高350万円(海外留学は450万円)
- 固定金利:年1.78%
- 20日で入金
教育一般貸付は学びたい人を支援するための制度です。
入学にかかる費用や在学中の費用、海外留学や資格取得資金など、「学ぶ」ための資金として貸付してもらえます。
利用できるのは世帯年収が200万円以下、もしくは子どもが3人以上いる一部世帯です。
借りられるのは、子ども1人あたり350万円で、固定金利かつ低金利で借りることができ、在学中は利息のみの返済にすることも可能ですので、卒業して働きだしてから子どもが自分で返済することもできます。
教育一般貸付を利用する流れ
SETP1.インターネットで申し込み
STEP2.審査結果の連絡(10日前後)
STEP3.契約
STEP4.融資開始(審査結果が出てから10日前後)
審査もしくは契約時に申込人が来店しなくてはいけないケースもありますが、来店なしで手続きを完了させることもできる、とても使いやすい教育ローンになっています。
生活福祉資金貸付制度でお金を借りる方法
生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯・障害者世帯・高齢者世帯に対して貸付を行う制度で、貸付資金の種類は下記の4種類になります。
- 総合支援資金
- 福祉資金
- 教育支援資金
- 不動産担保型生活資金
原則として連帯保証人が必要ですが、立てられない場合でも貸付を受けられます。
ただし連帯保証人がいる場合には無利子で借りられますが、連帯保証人なしの場合は、金利が年1.5%かかります。
貸付対象
低所得者世帯
必要な資金を民間の金融機関から借りられない、市町村民税が非課税となっている世帯
障害者世帯
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯
高齢者世帯
65歳以上の高齢者の属する世帯
総合支援資金とは
総合支援資金は、生活支援費・住宅入居費・一時生活再建費の3つに分類されます。
生活支援費
低所得者世帯において、失業や収入の減少などにより、生活が苦しくなったときに支援するための資金です。
支援を行うことで、自立した生活を取り戻せると判断された場合に利用できます。
貸付限度額:【単身】月15万円以内【2人以上】月20円以内
住宅入居費
引っ越しをするときに必要な敷金や礼金などの費用を、低所得者世帯に対して貸し付けする支援資金です。
引越し費用など入居に係る費用であれば利用できます。
貸付限度額:40万円以内
一時生活再建費
生活支援費では補えない費用が発生したときに利用できる資金です。
具体的には就職や転職を前提とした技能取得にかかる経費や、滞納している公共料金の立替費、債務整理をするために必要な経費などが該当します。
貸付限度額:60万円以内
福祉資金とは
福祉資金は福祉費と緊急小口資金の2つに分類されます。
福祉費
福祉費の使途はとても多く、生業を営むために必要な経費や福祉用具等の購入、冠婚葬祭に必要な経費などが該当します。
総合支援資金と違って、障害者世帯や高齢者世帯も利用できるという特徴があります。
貸付限度額:580万円以内
緊急小口資金
急な入院や介護費の発生、給与の盗難など緊急かつ一時的に生計の維持が難しくなったときに借りることができる資金です。
貸付限度額:10万円以内
教育支援資金とは
教育支援資金は、教育支援費と就学支度費の2つに分類されます。
教育支援費
低所得者世帯に属する人が高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校に就学するために必要な費用を貸し付ける支援資金です。
学校を卒業するまでに生計が維持できることが利用するための条件になります。
貸付限度額:【高校】月3.5万円以内
【高専・短大】月6万円以内
【大学】月6.5万円以内
就学支度費
低所得者世帯に属する人に高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、専修学校の入学金として貸し付ける支援資金です。
こちらも教育支援費と同じく、学校を卒業するまでに生計が維持できることが利用するための条件になります。
貸付限度額:50万円以内
不動産担保型生活資金とは
不動産担保型生活資金は不動産担保型生活資金と要保護世帯向け不動産担保型生活資金の2つに分類されます。
不動産担保型生活資金
居住用不動産を所持している高齢者世帯に対して、不動産を担保に生活資金を貸し付ける制度です。
担保にした不動産に住み続けることができます。
ただし、配偶者と親(配偶者の親も含む)以外の同居人がいないことが利用条件になります。またマンションなどの集合住宅は対象外です。
貸付限度額:月30万円以内(土地の評価額の70%程度)
要保護世帯向け不動産担保型生活資金
この制度を利用しなければ生活保護の対象になる要保護であると福祉事務所が認めた世帯向けの貸付金で、評価額が500万円以上の居住用不動産を担保にして、生活資金を融資してもらえます。
貸付限度額:生活扶助額の1.5倍以内(土地の評価額の70%程度、集合住宅は50%)
生活福祉資金貸付制度を利用する流れ
生活福祉資金貸付制度を利用してお金を借りるには、まず自治体の福祉課や社会福祉協議会に相談することから始めます。
SETP1.自治体の福祉課や市区町村社会福祉協議会に相談
STEP2.市区町村社会福祉協議会に借り入れ申込み
STEP3.都道府県社会福祉協議会による審査
STEP4.審査結果の連絡
STEP5.都道府県社会福祉協議会に借用書を提出
STEP6.貸付金交付
流れがやや複雑ですが、担当者と相談しながら進めていきますので、実際に利用する際にはそれほど難しいポイントはありません。
母子父子寡婦福祉資金貸付金でお金を借りる方法
母子父子寡婦福祉資金貸付金は、母子家庭や父子家庭、寡婦の方が経済的自立するための資金や、その子どもの福祉向上を支えるための修学資金などを貸し付ける制度です。
資金の種類と貸付限度額
母子父子寡婦福祉資金貸付金には12種類の資金があります。
安定した生活を維持するためのお金と、安定した収入を得るための学びのためのお金が貸付対象となっています。貸付限度額は都道府県によって違いますので、ここでは神奈川県の貸付限度額を掲載しています。
修学資金
高等学校、高等専門学校、大学、大学院及び専修学校に就学するために必要な、授業料などの費用。
貸付限度額:月額1.8万〜18.3万円
就学支度資金
高等学校、高等専門学校、大学、大学院及び専修学校に入学するために必要な、入学金や授業料などの費用。
貸付限度額:15万〜58万円
修業資金
児童や子どもが、事業を開始するか就職するために必要な知識や技能を習得するための費用。
貸付限度額:月額6.8万円(運転免許証の取得の場合は46万円)
技能習得資金
親や寡婦が、生計を安定させるために必要な知識や技能を習得するための費用。
貸付限度額:月額6.8万円(一括貸付 81.6万円)
生活資金
知識や技能を習得したり、医療や介護を受けたりするなどして収入が途切れているときの生活を安定させるための資金。
貸付限度額:月額6.9万〜14.1万円
医療介護資金
医療や介護を受けるための資金。
貸付限度額:医療34万(特に経済的困難な場合48万円)介護50万円
住宅資金
家を建てたりリフォームするときなどに必要な資金。
貸付限度額:150万円(特別な場合は2000万円)
転宅資金
引っ越しをするために必要な資金。
貸付限度額:26万円
就職支度資金
就職をするのに必要なスーツなどを購入するための資金。
貸付限度額:10万円(自動車購入は33万円)
事業開始資金
事業を開始するために必要な設備や材料などを購入するための資金。
貸付限度額:285万円
事業継続資金
現在営んでいる事業を継続するために必要な設備や材料を購入するための資金。
貸付限度額:143万円
結婚資金
児童や子どもが結婚するために必要な結婚式や披露宴の経費、新居の家具や什器を購入するための資金。
貸付限度額:30万円
母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用する流れ
母子父子寡婦福祉資金貸付金を借りるためには、まずは市区町村の児童福祉所管課や都道府県の保健福祉事務所に相談することから始めます。
自治体によって窓口が違いますので、どこに相談していいのか分からない場合には、市役所の福祉課に連絡して母子父子寡婦福祉資金貸付金の相談をしたいと伝えてください。
福祉課で対応できない場合でも、担当部署につないでもらえます。
母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用するには審査があります。
審査のポイントは「きちんと返済ができる」ということで、返済の見込みがない場合には審査落ちするケースもありますので、相談する際には返済計画書を用意しておきましょう。
国からお金を借りるメリットとデメリット
国からお金を借りる場合には、民間の金融機関にはないメリットとデメリットがあります。どのようなメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。
メリット
国からお金を借りるメリットは次の2点です。
- 無金利もしくは低金利で借りられる
- 所得が低くても借りられる
国からお金を借りる場合の最大のメリットは、金利なしもしくは低金利で借りられるという点にあります。
金利が高い場合、できるだけ早くに返済しないと利息が膨れ上がってしまいますが、金利が低ければ、返済を焦る必要がありません。
また、国によるセーフティーネットですので、低所得者でも借りることができます。
もちろん、返済可能な範囲内ということになりますが、民間の金融機関のように門前払いされないというメリットがあります。
デメリット
国からお金を借りるメリットばかりではなく、もちろんデメリットもあります。
- お金が必要な理由と返済計画を明確にして伝える必要がある
- 融資開始までに時間がかかる
民間から借りる場合には、お金が必要な理由を聞かれることもありますが、カードローンのように使用用途自由なローンもあります。
国から借りる場合には、税金を利用しますので、なぜ必要なのかを聞かれ、その妥当性を確認されます。
さらには返済が本当に可能であることを示す必要もあります。
これらを行うためには、面談も含めて時間がかかります。
即日融資ができないどころか、融資開始まで1ヶ月くらいかかることもありますので、急ぎのケースでは利用できないというデメリットがあります。
国からお金を借りるときも利用は計画的に
国からお金を借りることができる3つの制度についてご紹介してきました。
あまりに情報が多すぎて把握しきれないかもしれませんので、重要なポイントをまとめておきます。
- 日本政策金融公庫は事業資金もしくは教育資金を借りることができる
- 生活福祉資金貸付制度は低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯が利用できる
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金は母子家庭や父子家庭、寡婦が利用できる
- 利用するためのハードルが最も低いのは生活福祉資金貸付制度
- 支給されるのではなく貸付なので返済できることが融資条件
- 融資開始まで時間がかかる
3つの制度をご紹介しましたが、収入が少なくて銀行や消費者金融からお金を借りられなかったという場合には、生活福祉資金貸付制度を利用して生活費を借りましょう。
ただし、母子家庭や父子家庭、寡婦という状態にある場合には、母子父子寡婦福祉資金貸付金を優先的に利用してください。
3つの制度はいずれも貸付であって、支給ではありません。
借りたら返さなくてはいけませんし、返せるあてのない人には生活福祉資金貸付制度でも融資してもらえません。
さらに、融資開始まで時間がかかりますので、今すぐお金が必要という場合にも利用できません。
これらの制度を利用するには、返済計画をきちんと示す必要があります。
国には国民を守る義務がありますが、だからといって予算が無限にあるわけでもありません。
きちんと返せることを示せない場合には融資を受けられませんので、そのことだけはしっかりと頭に入れておきましょう。