農業を営む人にとって、お金を預ける金融機関といえば農協のJAバンクですよね。
農業に必要な設備を導入するときの資金調達の相談をするのは農協ですし、営農指導や肥料や農薬の購入なども農協なしでは考えられません。
そんな農協は農業に必要なお金だけでなく、農業を営む人の生活に必要な、様々なお金も貸してくれます。
ここではそんな農協からお金を借りる方法と、農協ローンの特徴について詳しくご紹介していきます。
Contents
このページでわかること
農協は銀行と同じようなローンのラインナップがあり、商品によっては銀行よりも低金利で借りることができます。
ただし、農業者以外が利用するには出資して准組合員になる必要があります。さらに申し込みや契約は店舗の窓口で行うため、会社員の人は何度か仕事を休まなくてはいけません。
それでも審査のハードルは銀行よりも低く、融資を受けられる基準が明確になっていますので、比較的借りやすい金融機関ではあります。
もちろん審査が甘いわけではないので、ブラックリストに載っている場合や他からすでに高額な借り入れがある場合には審査落ちします。
そのような問題もなく、安定した収入があるなら収入に応じた金額の融資を受けるのはそれほど難しくありませんので、身の丈にあった金額を計画的に借りるようにしましょう。
農協(JAバンク)でお金を借りるときの基礎知識
まずは農協がどのような組織なのか、簡単に説明しておきます。農業に携わっている人ならすでに知っていることかもしれませんが、復習の意味も込めて目を通しておきましょう。
農協の正式名称は農業協同組合です。
農業協同組合法に基づく農業者による協同組合で、JAと呼ばれることもあります。
その農協と信用農業協同組合連合会、農林中央金庫の3団体で構成している信用事業がJAバンクになります。
主な利用者は農協の正組合員ですが、実は農業を営んでいない人にも開かれています。
ただし、一般の人がローンなどの金融サービスを受けるには、農協に出資して准組合員になる必要がありますので、農業者でない場合にはすぐに利用できるわけではないので注意してください。
農協(JAバンク)と銀行はどう違う?
農協は銀行と同じように使えるため、その違いを知らないという人もいますよね。
預金などで使う場合には、別にその違いを気にする必要はないのですが、お金を借りるとなると少し事情が違ってきます。
農協は銀行とどう違うのか、その違いを見ていきましょう。
農協のJAバンクは一般の人でも利用できるとお伝えしましたが、それでも基本的には農業者のための金融機関であることには変わりありません。
地方では農協以外の金融機関が郵便局くらいしかない地域もあり、その地域で農家以外の人もお金に困らないようにと一般の人も利用できるようになっているだけのことです。
農協が銀行と決定的に違うのは、口座の管理を支店ごとに行っているという点です。
農家の人たちは転勤がありませんので、定期預金の解約や住所変更の手続きなども、すべて最初に口座を作った支店で行う仕組みになっています。
融資という面では、銀行よりは審査のハードルが低めに設定されています。
決して審査が甘いわけではありませんが、営利目的で運営しているわけではなく、なおかつ農家の人が生活苦で農業を続けていけなくなったら、農協にもダメージがあるため貸し渋りのようなことはしません。
- ブラックリストに載っている
- 他の金融機関からの借り入れが多すぎる
- 収入がない
このような人は間違いなく審査落ちしますが、安定した収入が見込めて、無理なく返済できる範囲内の借り入れであれば、きちんとお金を貸してもらえます。
取り扱っているローンの種類と金利
農協では下記のように銀行と同じ種類のローン商品がラインナップされています。それらに加えてJAの農業融資としてお金も借りることができます。
- 住宅ローン
- マイカーローン
- 教育ローン
- リフォームローン
- カードローン
- フリーローン
- JAの農業融資
基本的にはすべてのJAでこれらのローンを利用できますが、適用される金利には地域ごとに違いがあります。それぞれのローンについて、簡単に特徴をご紹介します。
住宅ローン
金利:年0.600〜0.90%(JA横浜:JA住宅ローンとくとくプラン)
不動産を担保にして住宅の新築や購入、そしてリフォームなどに使えるローンです。
金利変動型と固定金利型の2種類があり、さらに一定の条件を満たした正組合員が金利引き下げを受けられる「とくとくプラン」が用意されている地域もあります。
マイカーローン
金利:年1.75〜4.5%(JA横浜)
マイカーの購入や修理、車検費用などに利用できる、無担保一括貸付型のローンです。
自動車だけでなくバイクや除雪車などの購入や、運転免許の取得費用、車庫建設資金など、車に関する様々な用途に利用できます。
教育ローン
金利:年1.80〜4.90%(JA横浜)
学校の入学金や授業料などの就学に必要となる資金を借りることができる、無担保一括貸付型のローンです。
大学だけでなく中学校・小学校・幼稚園・保育園等も対象で、一人暮らしをするためのアパートの家賃支払いなどにも利用できます。
リフォームローン
金利:年1.990〜2.94%(JA横浜)
住宅ローンでもリフォームは可能ですが、その場合は不動産を担保にしなくてはいけません。
自宅を担保にせずに、住宅の増改築やリフォームをしたい場合に使えるローンが農協のリフォームローンです。
こちらも住宅ローン同様に、金利の引下げを受けられる地域もあります。
カードローン
金利:年9.20〜11.60%(JA横浜)
ローンカードを使ってATMやCDからお金を借りるタイプのローンです。
他のローンは計画的に利用することが前提になっていますので、必要なときに必要な額を一括で借りて、その後は計画的に返済しますが、カードローンは突然お金が必要になっときなどに、いつでも何回でも繰り返してお金をかりることができます。
フリーローン
金利:年5.775〜9.30%(JA横浜)
フリーローンはカードローンと混同されがちですが、カードローンと違って一括貸付してもらうタイプのローンです。
結婚式や海外旅行などの明確な使用目的がある場合に使用します。使用目的が自由ということで、フリーローンと呼ばれています。
JAの農業融資
JAは農業を営む人を支えるための金融機関ですので、農業に関する融資も行っています。
認定農業者や認定新規就農者、それ以外の担い手によって借りられる資金の種類に違いはありますが、いずれも農業の運転資金であるアグリマイティー資金やJAは農機ハウスローンなどの利用が可能です。
農協(JAバンク)でお金を借りるメリットとデメリット
それでは数ある金融機関の中から、あえて農協から借りるのにはどんなメリットがあるのでしょう?
また、農協ならではのデメリットも気になりますよね。ここではメリットとデメリットをそれぞれ分かりやすく説明していきます。
メリット
- お金を借りられる基準が明確になっている
- 低金利でお金を借りることができる
- 利用できるATMの数が多い
農協ローンの多くが、利用できる条件をかなり具体的にしています。
例えばJAの横浜の住宅ローンは、勤続(営業)年数1年以上で、年収150万円以上と明記されています。しかもこの条件なら、働いている人のほとんどが該当しますよね。
もちろん年収に見合った金額しか借りられませんが、自分が借りられるかどうかの基準を申し込み前に把握できるのは安心できます。
しかも非営利団体ですので、金利がとても低めに設定されていますので、返済も楽に行えるのが農協ローンの魅力です。
また、カードローンで利用できるATMの数も多く、銀行のカードローンと同じような使い勝手の良さがあります。しかも農協は日本全国どこにでもありますので、旅行先でも借りたり返済したり出来るという強みがあります。
デメリット
- 農業者以外は准組合員でないと利用できない
- 地域によってローンの種類や金利が違う
- 融資を受けるのに時間がかかる
デメリットはやはり准組合員にならないと借りられないという点です。
出資金は1円程度でいいですし、解約すれば戻ってくるのですが、そのための手続きが必要です。
店舗の窓口に行かないと准組合員になれませんので、融資を受けられるようになるのに手間がかかります。
さらに、地域ごとにローンの種類や金利が違います。准組合員と組合員でも金利が違うこともあります。
自分が利用した地域の金利よりも、他の農協のほうが数%低金利だったなんてこともあります。
さらには、融資を受けるのにかなり時間がかかります。
最近はインターネットだけで完結しているローンも増えましたが、それでも融資開始までに数日かかります。
今すぐお金が必要というときに利用できないというのが農協ローンのデメリットになります。
ローン申し込みから融資開始までの流れ
農協ローンと一括りにできないほど、申し込みから融資開始までの流れがそれぞれ違います。
例えばマイカーローンの申し込みの流れは下記のようになっています。
SETP1.仮審査の申し込み
STEP2.仮審査
STEP3.仮審査結果の連絡
STEP4.窓口で正式な申し込み
STEP5.本審査
STEP6.本審査結果の連絡
STEP7.窓口で契約手続き
STEP8.融資開始
ローンの種類によっては仮審査がないケースもあります。
仮審査では基本的な条件を満たしているかどうかの確認だけ行われます。
本格的な審査は本審査ですので、仮審査を通過したからといって、必ず融資を受けられるわけではありません。
ポイントは正式な申し込みや契約はすべて窓口で行う必要があるという点です。
農業者であれば時間に融通を利かせられますが、会社員の場合には2度も会社を休む必要がありますので、不便に感じるかもしれません。
こういう部分からも、JAバンクが農業者のための金融機関であることが伝わってきます。
時間と手間がかかることを理解した上で利用しよう
農協のローンを見ると金利がかなり低く、利用条件も緩いので、銀行で審査に落ちた人にしてみれば「ここならば借りられるかも」と期待しますよね。
実際に借りやすさはありますが、審査が甘いわけではありません。
しかも農業者以外が利用するには准組合員になる必要がありますし、申し込みや契約のために何度も窓口を訪れなくてはいけません。
銀行や消費者金融などは、すべてインターネットやスマートフォンのアプリで融資まで行えるような時代に、これではかなり使いづらいですよね。
申し込みや融資開始まで時間がかかるというデメリットもあります。
とはいえ、魅力的なローン商品がラインナップされているのも事実です。
利用する場合には、ある程度の時間と手間がかかることを理解した上で活用しましょう。