会社のリストラなどで急に生活費が必要になったとき、解約払戻金のある生命保険に入っているなら、まず思いつくのが生命保険の解約ですよね。
加入時期やプランにもよりますが、それなりに高額な積立があり、新しい職場が見つかるまでの生活をつなぐのに役立ちます。
でも、生命保険は解約すると、次に加入するときには加入時の年齢が上がっているので、保険料が増えてしまいます。
健康状態によっては加入できないことも考えられます。
だとすると安易に解約というわけにはいきませんよね。
そんなときにおすすめなのが、生命保険会社の契約者貸付制度です。
ここでは契約者貸付制度の仕組みや利息について詳しく説明していきます。
Contents
このページでわかること
積立型の生命保険を担保にして、お金を借りることができる契約者貸付制度。
利用者は生命保険を解約する必要がなく、生命保険会社は顧客を失わなくて済むというwin-winの関係で生まれたこの貸付制度は、金利も低く審査もないため、一時的にお金に困っている人には最適です。
保険の種類にもよりますが、解約返戻金の80%くらいまで借りられるので、長期間積立をしてきた場合には、かなりまとまったお金の借り入れにも使えます。
ただし、金融機関のローン商品のように定期的な返済がありませんので、知らないうちに利息が膨れていることもあります。
返済期間がなく催促されるわけでもないため、気がつけば解約返戻金を超えてしまい、保険が失効するようなリスクもありますので、利用するときには返済計画をきちんと立てておく必要があります。
生命保険を担保にお金を借りるときの基礎知識
それではまず生命保険を担保にお金を借りることのできる、契約者貸付制度についてどのような仕組みなのか、その基礎知識について学んでいきましょう。
契約者貸付制度とは
契約者貸付制度は解約返戻金の60〜90%くらいを、生命保険会社が貸付けしてくれる制度です。
これだけですとよく分からないかとおもいますので、少し噛み砕いて説明していきます。
生命保険にはいくつもの種類がありますが、積立型と呼ばれる満期になったときに満期保険金を受け取れる保険があります。
この保険はもちろん途中解約も可能で、解約時に加入年月に応じて解約返戻金を受け取れます。
ただし、すでにお伝えしましたように一時的にお金が必要だからといって解約すると、また保険に入るときに高い保険料を払わなくてはいけなくなります。
再加入できないリスクもあります。
できることなら解約はしたくないですよね。
保険会社にとっても解約は会社として嬉しいことではありません。
できることなら契約を続けてもらいたいという思いがありますので、「一時的にお金が必要であるなら貸します」という制度を作りました。
これが契約者貸付制度です。
契約者貸付制度は解約返戻金の80%程度借りられる
「解約するくらいならお金を貸します」と言ったものの保険会社は金融機関ではありませんし、審査をするノウハウもありません。
このためリスク回避のために、お金を貸すのに担保を取ります。
その担保となるのが生命保険の積立金というわけです。
例えば、いま解約したら解約返戻金が200万円だったとします。
契約者貸付制度はこの200万円を担保にお金を貸すわけです。
このため、基本的には解約返戻金の範囲内でしか借り入れはできません。
この場合には200万円ということになります。
ただし、貸付けには利息も発生しますので、利息分の余裕を考えて融資上限を設定しています。
いくらまで貸付できるかというのは保険会社や保険の種類によって違いますが、一般的には解約返戻金の80%を借りることができます。
借りたお金の使用用途は自由で、何に使ったかを報告する義務もありません。
返済日の指定なし
銀行や消費者金融で借りたお金はいつまでに返済するかが決まっていますが、契約者貸付制度で借りたお金の場合は返済日が決まっていません。
あえてあるとすれば満期になる日ですが、満期になった場合には、融資額と利息を差し引いた金額が満期保険金として払われるだけです。
このように返済期日が決まっていませんので、返済に追われることがありません。
しかも利用限度額の範囲内なら何度も借り入れが可能です。
契約者貸付制度の例
契約者貸付制度についての情報はほとんどの生命保険会社が、インターネット上の会員マイページで確認できるようになっていて、あまり情報がありません。
ここでは公開されている範囲内で、代表的な保険会社がどれくらいの利率で、いくら借りられるのかの例をご紹介します。
第一生命
適用金利 | 年3.00〜5.75%(生命保険の契約日により決まる) |
解約返還金に対する利用可能額 | 60〜80% |
ソニー生命
適用金利 | 年3.00〜6.25%(生命保険の契約日により決まる) |
解約返還金に対する利用可能額 | 70〜90% |
損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
適用金利 | 年3.25%(旧日本興亜生命加入の場合は年2.75〜3.75%) |
解約返還金に対する利用可能額 | 不明 |
貸付限度額 | 300万円以下 |
FWD富士生命
適用金利 | 年2.25〜4.10% |
解約返還金に対する利用可能額 | 80〜90% |
貸付限度額 | 300万円以下 |
契約者貸付制度を利用するための流れ
それでは実際に契約者貸付制度を使って、お金を借りるときの流れを見ていきましょう。
STEP1.保険会社に連絡・相談
STEP2.保険会社から書類の発送
STEP3.必要書類を返送
STEP4.貸付金が振り込まれる
まずは保険会社に連絡しましょう。
契約者貸付制度について説明を受けたい場合には窓口や担当者に相談することから始めてください。
保険会社に連絡すると貸付けに必要な書類を送ってくれます。
その書類に必要事項を書き込んで返送すれば申し込みは終わります。
金融機関のカードローンやフリーローンのような審査がないのが、契約者貸付制度の特徴です。
必要書類が保険会社に届けば、貸付金が指定口座に振り込まれます。
ちなみにインターネットや電話で申し込みができる保険会社なら、申し込みから最短で3営業日で融資を受けられます。
生命保険を担保にお金を借りるメリット・デメリット
生命保険を担保にしてお金を借りる方法について、ある程度イメージができるようになったかと思います。
そのイメージをもう少し明確にするために、契約者貸付制度を利用したときのメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
- 保険に加入し続けられる
- 低金利でお金を借りることができる
- 金融事故を起こしている人でも借りられる
まずはなんと言っても、保険を解約せずに済むという点です。
保険は一度解約すると再加入するのが簡単ではありません。
せっかく積み立ててきたのですから、満期まできちんと続けたいという思いもありますよね。
また、金融機関から借りるよりも金利が低いという点も魅力的です。
2000年代に加入した保険ならおそらく金利は2.5〜3.5%くらいの範囲内に収まります。
カードローンなら10%の金利というのも珍しくありません。
金利が低いと利息が減りますので、返済の負担が軽くなります。
そして、生命保険を担保にしているので、金融事故を起こしている人でも問題なく利用できます。
信用調査をされることもありませんので、在籍確認もありません。
きちんと保険料を払っている人なら、誰でも利用できるというメリットがあります。
デメリット
- 複利で利息が発生するので長期の借り入れは不利
- 解約返戻金の範囲を超えると保険が失効する
- バブル期などに加入した保険の場合は利率が高い
デメリットは返済日が決まっていないため、返済を先送りしていると利息が雪だるまのように増えていくということです。
金利は複利ですので、年3%で100万円借りたら、1年後には借り入れが103万円に増えます。
次の1年後には106900円に増えます。
気がついたら解約返戻金の額を上回ってしまい、保険が失効してしまうこともあります。
これではなんのために契約者貸付制度を利用したのか分かりませんよね。
利息だけ払って損をした形になってしまいます。
メリットで金利が低いとお伝えしましたが、金利はいつ保険に加入したかで決まりますので、金利の高いバブル期に加入した場合には、低金利というメリットがなくなってしまうこともあります。
必ずしも金融機関よりも低金利というわけではありませんので、気をつけてください。
生命保険でお金を借りるときには短期間で返済しましょう
保険を解約せずに、まとまった額の現金を手にすることができる契約者貸付制度。
保険加入を継続したいけどお金に困っているという人には、とても魅力的な制度になっていることを理解してもらえたかと思います。
基本的には金融機関よりも金利が低く、さらに審査もありません。
即日融資とはいきませんが、早ければ3営業日くらいで融資を受けられます。
このようにとてもメリットが多い一方で、返済日が決まっていないことにより、利息が膨れ上がっていくというデメリットがあります。
お手軽にお金を借りられる制度として安易に使うのではなく、利用するときにはきちんと返済計画を立てて申し込みをしてください。
できれば1ヶ月程度の返済、少なくとも半年くらいで返せるあてがないのであれば、金融機関からの借り入れも同時に検討しておきましょう。