年金生活者でも、思わぬ入院や冠婚葬祭でお金が必要になることがありますよね。
でも、貯蓄もないし収入は年金だけ。
そういう人に対して、金融機関はまずお金を貸してくれることがありません。
持ち家でもあれば、それを担保に借りることができるかもしれませんが、そうでないと手詰まりですよね。
そんなときに、年金を担保にしてお金を借りることができる融資制度があります。
年金は担保にしてお金をかりるのは違法では?そう思うかもしれませんが、ちゃんと借りられる仕組みがあります。
ここではそんな、年金を担保にお金を借りる方法についてご紹介します。
Contents
このページでわかること
民間の金融機関は、年金を担保にお金を貸付することを禁止されています。
ただし、特例として福祉医療機構と日本政策金融公庫の2つだけが、年金受給者のセーフティーネットとして年金を担保にお金を貸すことが認められています。
利用できる年金担保融資の種類は、受給している年金の種類によって違います。
会社員や個人事業主だった人は福祉医療機構、公務員だった人は日本政策金融公庫を利用します。
融資を受けるときには審査が発生しますので、融資を断られることもあります。
さらに審査に通過しても申込みから融資開始まで1ヶ月近くかかりますので、急ぎでお金が必要なケースでは利用できません。
返済は年金から天引きされますので、利用後は生活費が不足しやすい状況になってしまいます。
このようなデメリットもありますが、年金受給者が借りられる数少ない貸付制度ですので、本当にお金に困ったときのセーフティーネットとして覚えておきましょう。
年金を担保にお金を借りるときの基礎知識
すでにお伝えしましたが、年金を担保にお金を融資するのは禁止されています。
ただし、それは民間の金融機関においての話で、年金受給者が突発的な出費で困らないように、国が年金担保融資制度を用意しています。
ここではそんな年金担保融資制度の基礎知識について、わかりやすく説明していきます。
年金担保融資とは
年金担保融資はその名前の通り、年金を担保にお金を貸してくれる制度のことです。
厚生年金保険法と国民年金法により、年金を担保に貸付することを禁止しています。
ところが昭和40年代に、年金受給者が高利貸しから年金証書を担保にしてお金を借りたことが社会問題になりました。
これにより年金受給者もまとまったお金を借りられる環境が必要ということで、例外的に年金担貸付事業が作られました。
ちなみに、公務員に対しては昔から年金を担保にして貸し付ける制度(恩給・共済年金担保貸付)があり、官民で格差があるということも、この制度が作られたきっかけになりました。
年金担保融資を実際に行っているのは、福祉医療機構と日本政策金融公庫の2つです。
公務員に対して貸付けをしているのが日本政策金融公庫で、会社員や個人事業主に対して貸付を行っているのが福祉医療機構です。
いずれにしても、年金受給者がおかしなところからお金を借りないようにと作られたのが、年金担保融資制度になります。
年金担保融資の種類と金利
年金を担保にお金を借りる年金担保融資は、受給している年金によって2つの融資元があり、合わせて3種類の融資制度があります。
福祉医療機構
年金担保貸付:厚生年金・国民年金・船員保険年金
労災年金担保貸付:労働者災害補償保険年金
日本政策金融公庫
恩給・共済年金担保貸付:恩給・災害補償年金・共済年金・共済組合が支給する厚生年金
いずれも共通しているのは、生活保護受給中や過去に恩給・共済年金担保貸付を利用中に生活保護を受給し、生活保護廃止から5年経過していない場合は利用できないという点です。
生活保護利用経験のある人は注意してください。
それぞれの融資制度について簡単にご紹介します。
年金担保貸付
融資元 | 独立行政法人福祉医療機構 |
金利 | 年2.8% |
融資限度額 | 10万円~200万円 |
使用用途 | 自由(投機性が高い場合や公序良俗に反する場合は不可) |
独立行政法人福祉医療機構が行っている年金担保貸付事業で、厚生年金・国民年金・船員保険年金を受給している人を対象に融資を行います。
上記融資限度額範囲内(資金使途が生活必需物品の購入の場合は10万円~80万円)で受給している年金の年額の0.8倍、1回あたりの返済額の15倍以内まで融資を受けられます。
返済は年金支給機関から支給される年金のうち、年金支給額の1/3以内で指定した金額(最低1万円)が自動的に返済に充てられます。
労災年金担保貸付
融資元 | 独立行政法人福祉医療機構 |
金利 | 年2.1% |
融資限度額 | 10万円~200万円 |
使用用途 | 自由(投機性が高い場合や公序良俗に反する場合は不可) |
年金担保貸付と同様に独立行政法人福祉医療機構が行っている年金担保貸付事業で、労働者災害補償保険年金を受給している人を対象に融資を行っています。
年金担保貸付よりも低金利に設定されています。
恩給・共済年金担保貸付
融資元 | 日本政策金融公庫 |
使用用途 | 自由 |
恩給・災害補償年金を受給
金利 | 年0.36% |
融資限度額 | 250万円まで(担保とする年金の年額の3年分以内) |
共済年金・共済組合が支給する厚生年金を受給
金利 | 年1.71% |
融資限度額 | 250万円まで(担保とする年金の年額の1.8年分以内)、生活資金は100万円 |
日本政策金融公庫が行っている年金担保融資で、公務員を対象に融資を行っています。
完済するまですべての年金が自動的に返済に充てられますので、利用する場合には生活費も考えて計画的に利用する必要があります。
年金担保融資を利用するための流れ
それでは年金担保融資を利用して、お金を借りるための流れについてご紹介します。
どこから借りるかで流れが違いますので、それぞれ分けて見ていきましょう。
年金担保貸付・労災年金担保貸付を利用する流れ
年金担保貸付・労災年金担保貸付の申し込みは年金を受け取っている銀行や信用金庫などの店舗(ゆうちょ銀行、農協、労働金庫は対象外)で行います。
STEP1.年金を受け取っている金融機関で相談する
STEP2.金融機関で利用申込み
STEP3.申込み内容の審査
STEP4.審査に通過したら指定口座に振り込み
この制度を利用すると、年金支給機関から福祉医療機構に年金が支払われ、福祉医療機構は指定した額を返済に充当し、残り金額を年金として受給者に送金します。
恩給・共済年金担保貸付を利用する流れ
恩給・共済年金担保貸付を利用するには、日本政策金融公庫(沖縄は沖縄振興開発金融公庫)で相談することから始めます。
STEP1.日本政策金融公庫で相談する
STEP2.日本政策金融公庫で利用申込み
STEP3.申込み内容の審査
STEP4.審査に通過したら指定口座に振り込み
完済するまで恩給や年金を日本政策金融公庫が受け取り、利息と返済に充てられます。
年金を担保にお金を借りるメリット・デメリット
ここまでの説明で、年金を担保にお金を借ることができる仕組みを理解できたかと思います。
それでは次に、実際に利用したときのメリットとデメリットについて説明します。
メリット
- 借りたお金の使用用途がほぼ自由
- 低金利で借りられる
- 天引きされるので返済忘れがない
恩給・共済年金担保融資に関しては使用用途の制限がなく、年金担保貸付・労災年金担保貸付の場合も投機や公序良俗に反していなければ、使用用途は自由です。
ただし、借りたお金を何に使うかの申告が必要で、生活必需品の購入の場合には融資の上限が下がります。
また、かなりの低金利で利用できるのも大きなメリットです。
金利が低ければ利息が小さくなりますので、無理のない返済が可能になります。
その返済も、年金から天引きされますので、返し忘れて催促されるということもありません。
デメリット
- 融資まで時間がかかる
- 生活保護受給者は利用できない
- 無計画に利用すると返済で苦しむことになる
最近は即日融資をしている金融機関が増えてきましたが、この制度を利用してお金を借りる場合には融資まで1ヶ月近くかかります。
このため、いますぐお金が必要というようなケースで利用できません。
さらには生活保護を受給している人が利用できないなどの制約もあります。
そして大きな問題は、無計画に利用すると返済時の収入が減ったり止まったりして、簡単に生活保護のお世話になってしまうということです。
特に恩給・共済年金担保融資は年金が全額返済に充てられますので、借りるときに完済までの生活費も借りておく必要があります。
年金担保貸付・労災年金担保貸付を借りられるのは平成34年3月末まで
年金受給者のセーフティーネットである年金担保貸付・労災年金担保貸付ですが、これらは平成34年3月末の申し込みが最終となります。
様々な議論がされましたが、やはり年金を担保にするのは弊害が大きく、時代の流れに合っていないというのが結論のひとつとして挙げられ、廃止されることが決まりました。
ただしセーフティーネットがなくなるわけではなく、これからは社会福祉協議会が実施する「生活福祉資金貸付制度」を利用することで想定外の出費などに対応することになります。
しばらくは、年金担保貸付や労災年金担保貸付の申し込みが可能ですが、いずれ利用できなくなることを前提に活用してください。
受付終了となるまでの期間に、少しずつでもいいので貯蓄をしていくなどして、借りられなくなっても大丈夫な環境を整えておきましょう。
本当に困ったときの最終手段として利用しよう
年金を担保にお金を借りるというのは、本来はイレギュラーなことであり、本当に困ったときの最終手段です。
借りたお金はきちんと返済しなくてはいけませんので、借り入れした後の生活は確実に苦しくなります。
お金が不足したときに、「年金を担保にして借りればいい」と安易に考えるのではなく、まずは借りずに済む方法がないかよく考えてください。
無計画に借りてしまったことで生活保護を受けるしかなくなった人もいますので、その存在に頼りすぎないことが大切です。
基本は受給する年金の中から積立を行って、3ヶ月分くらいの生活費は確保しておきましょう。
それでもお金が不足するようなこともあると思いますので、そういうときは迷わず年金を受給している銀行か日本政策金融公庫の窓口で、年金を担保に借りられないか相談してみましょう。